背景・状況

PRIMA!は会員59,000名以上を抱えるD2Cジュエリーブランドである。ハンドメイドという特性上、受注から納品までのワークフローは一般的なECとは大きく異なる。受注 → 色パターン集計 → 発注書作成 → 在庫管理 → 生産管理という独自の業務フローが存在し、これを既製のCRMで再現することが求められていた。

HubSpot、Salesforce、kintoneといった既製CRMを検討したが、いずれもハンドメイドD2Cの業務フローにフィットしないことが明らかになった。特に、金具色(Gold/Silver)とアイカラー(8色)の掛け合わせで生まれる16パターンの管理は、汎用ツールでは対応が困難だった。

課題・問題

既製CRMを導入する場合、以下の課題が避けられなかった。

  • 月額コストが高い(HubSpotのProfessionalプランで月額数万円〜)
  • カスタマイズに限界がある(16色パターンの集計や発注書自動生成は標準機能に存在しない)
  • 業務フローを「ツールに合わせる」必要があり、現場の負担が増える
  • 外部ツール連携のたびに追加コスト・追加設定が発生する

判断・アクション

最終的に、PHP 8.3 + MariaDBで完全内製する判断を下した。この判断には3つの明確な理由がある。

内製を選んだ3つの理由

  1. ビジネスロジックに完全フィットできる --- 16色パターン集計、発注書自動生成、在庫連動など、PRIMA!固有の業務ロジックをそのままコード化できる
  2. Xserverの既存環境を活用することでインフラコストがゼロ --- 既に契約しているサーバー環境でPHP + MariaDBが動作するため、追加コストが一切発生しない
  3. 段階的に育てられる --- 最初から完璧なシステムを目指さず、フェーズごとに機能追加していく設計が可能

設計上の重要な選択

  • OTP認証の採用 --- パスワード管理のコストを排除。メールアドレスにワンタイムパスワードを送信する方式で、ユーザーはパスワードを記憶する必要がない
  • セッションのDB管理 --- ファイルベースではなくデータベースでセッションを管理し、スケーラビリティとセキュリティを両立
  • メール通知の組み込み --- 受注登録、ステータス変更など、重要なアクション時に自動でメール通知を送信する仕組みを初期段階から組み込み

結果

v1.0を本番稼働させることに成功した。受注管理、顧客管理、発注書自動生成、在庫管理、生産管理の6フェーズを約1週間で構築。開発期間中も実際の業務データを使ってテストし、初日から実運用に投入できる品質を実現した。

インフラコストはゼロ。月額のSaaSライセンス費用も不要。今後の機能追加もすべて内部で完結できる体制が整った。

学び・気づき

この経験を通じて強く感じたのは、「スモールブランドにとって、既製品に業務を合わせることのコストは、内製のコストを上回ることがある」ということだ。

内製は確かに開発工数がかかる。しかし、一度作ってしまえば月額コストはゼロであり、業務フローの変更にも即座に対応できる。特にハンドメイドD2Cのように業務フローが独自であるほど、内製の価値は大きくなる。

最初から完璧を目指さないこと。v1.0は「最低限動く」を目標にし、実運用しながら改善を重ねていく。この姿勢が、1週間という短期間での本番稼働を可能にした。
KEY TAKEAWAYS

この記事のポイント

  • スモールブランドは「既製品に合わせる」より「業務に合わせて作る」方が結果的に安い。月額コストゼロ、カスタマイズ自由、業務変更への即応力を手に入れられる
  • 最初から完璧を目指さず段階的に育てる。v1.0は最低限動くことを目標にし、実運用しながら改善を重ねていくことで短期間での本番稼働が実現できる
  • OTP認証はパスワード管理が不要でユーザー体験が良い。「パスワードを忘れた」問題が発生せず、運用負荷が大幅に下がる