背景・状況

ハンドメイドジュエリーは少量多品種が基本である。PRIMA!の場合、金具パーツ(Gold / Silver)の在庫をリアルタイムで把握し、受注と発注に連動させる必要がある。金具が不足すれば生産が止まり、過剰に仕入れれば資金が寝る。在庫管理の精度がそのまま事業の収益性に直結する。

課題・問題

それまではExcelで在庫を管理していた。しかし、以下の問題が常態化していた。

  • 更新漏れが頻発する。受注があっても在庫を引くのを忘れる、入庫しても記録しないなど
  • 「あると思ったらなかった」問題。Excelの数字と実在庫の乖離が発生し、生産スケジュールに影響
  • 履歴が追えない。「この在庫はいつ、誰が、なぜ変更したのか」がわからない
  • 複数人での同時編集に耐えない。ファイルのバージョン競合が発生する

判断・アクション

在庫管理を「単独の機能」として設計するのではなく、CRMの受注管理・発注管理と完全に連動する形で設計する判断をした。在庫管理の本質は「数を数えること」ではなく、「受注と発注との整合性を保つこと」にある。

在庫管理の設計原則

  1. すべての在庫変動は「取引」として記録する。入庫、出庫、引当、戻し、調整 --- すべてのアクションに理由と日時を記録
  2. 手動での在庫変更は「調整」として明示する。自動連動以外の変更は必ず理由の入力を求める
  3. 在庫は「実在庫」と「引当済み」を区別する。発注確定時に引当し、実際に出荷するまでは引当状態として保持

実装した機能

  • リアルタイム在庫表示 --- Gold / Silver それぞれの現在在庫数をダッシュボードに表示。引当済み数も並記
  • 入庫登録・在庫調整 --- 仕入先からの入荷時に入庫登録。棚卸し時の差異は「調整」として理由付きで記録
  • 全取引履歴 --- 在庫のすべての増減を時系列で閲覧可能。「いつ、何が、なぜ変わったか」を完全にトレース
  • 発注確定時の自動引当 --- 発注書のステータスがSentになった時点で、該当数量を自動引当。引当済み在庫は他の発注に使用不可
  • キャンセル時の自動戻し --- 注文キャンセル時、引当済み在庫を自動で戻す。手動操作なしで在庫整合性を維持
  • 不足警告 --- 在庫が閾値を下回った場合にアラートを表示。発注タイミングの判断材料となる

結果

在庫精度は事実上100%を達成した。受注・発注との自動連動により、「更新忘れ」が物理的に発生しない仕組みになった。

不足警告により、金具の欠品が発生する前に仕入れを手配できるようになり、生産の停止リスクが大幅に低減した。全取引履歴により、在庫の数値に疑問が生じた際も即座に原因を追跡できるようになった。

学び・気づき

在庫管理システムを単体で設計しても意味がない。受注管理と発注管理が在庫を自動で増減させる仕組みがあって初めて、在庫データは信頼できるものになる。

また、全取引履歴の重要性は想像以上に高かった。「なぜこの数字なのか」を過去に遡って確認できることで、運用上の安心感が格段に向上した。

在庫管理の精度は「人の注意力」ではなく「システムの設計」で担保すべきもの。少量多品種のビジネスでは、手作業での在庫管理は遅かれ早かれ破綻する。
KEY TAKEAWAYS

この記事のポイント

  • 在庫管理は「単体」ではなく「受注・発注との連動」が本質。自動連動があって初めて在庫データは信頼できるものになる
  • 全取引履歴を残すことでトラブル時に追跡可能。「いつ、何が、なぜ変わったか」を完全にトレースできる仕組みが運用の安心感を生む
  • 少量多品種は自動化しないと破綻する。人の注意力に頼った在庫管理は、品種数の増加とともに必ず精度が下がる